コムラのコラム
「もう古いから」と諦める前に。
2026.08.01
今回ご依頼いただいたのは、築年数を重ねたマンションのシステムキッチンです。
いつもリフォームでお世話になっている工務店様から、
「キッチンの人工大理石の天板を、もう少しきれいにできませんか。」
そんなご相談をいただきました。
現場へ向かう車の中で、正直少し不安がありました。築年数もかなり経っていると聞いていたので、
「どこまできれいになるだろう。」
そんなことを考えながら現場へ向かいました。
実際に拝見すると、やはり人工大理石全体が黄色く変色しています。この黄ばみは、長い年月をかけて素材そのものが変化したもので、残念ながら現在の私の技術では元の白さまで戻すことはできません。その瞬間、「これは厳しいかな。」そう思いました。

でも、そこで終わりではありませんでした。
実際に天板へ手を触れてみると、「あれ?」と思ったんです。見た目ほど傷んでいない。
まだ素材そのものには、しっかり力が残っていました。「これは丁寧に磨けば、まだ応えてくれる。」そんな感覚がありました。

そこからは、一工程ずつ丁寧に作業を進めました。
研磨材の番手を何度も変えながら少しずつ表面を整え、最後は3種類のコンパウンドで仕上げていきます。
通常なら2時間ほどの施工ですが、今回は約3時間。
「このくらいでいいかな。」
そう思っても、
「もう一工程だけ。」
そんな気持ちで磨き続けました。
職人の仕事は、この”もうひと手間”で仕上がりが変わることがあるからです。

施工が終わり、最後にそっと天板へ手を滑らせてみると、最初とはまったく違う感触になっていました。
黄ばみは残っています。
でも、光沢は戻りました。
そして何より、手触りが本当に気持ちいい。
写真では伝わりにくいかもしれませんが、毎日使う場所だからこそ、この違いはきっと感じていただけると思います。

シンクも同じです。深い傷は残っていますが、丁寧に磨くことで光沢が戻り、キッチン全体の印象がぐっと明るくなりました。

最後に、磨き上げた天板には、「浴丸くん」と同じ親水性コーティングを施工しました。
このコーティングは、見た目を美しく仕上げるためだけのものではありません。
日々の汚れが付きにくくなり、お手入れもしやすくなるため、きれいな状態をより長く保つことができます。
せっかく丁寧に磨き上げた素材です。
その美しさを少しでも長く楽しんでいただけるよう、最後まで責任を持って仕上げています。
私は仕事をしていて、時々思うことがあります。まだ使えるものを、
「古いから。」
という理由だけで手放してしまうのは、少しもったいないな、と。
もちろん、交換した方が良い場合もあります。
でも、素材がまだ応えてくれるなら、その可能性を最後まで引き出してあげたい。
そんな仕事が私は好きなんです。
新品には戻せなくても、もう少し気持ちよく使えるようにする。
もう少し長く、大切に使っていただけるようにする。それも、職人の大切な仕事の一つだと思っています。
もし、ご自宅のキッチンを見て、「もう交換しかないかな。」そう思われている方がいらっしゃいましたら、一度ご相談ください。できることと、できないことを正直にお伝えした上で、その素材にとって一番良い方法を一緒に考えさせていただきます。
もしかすると、そのキッチンは、まだ応えてくれるかもしれません。